松葉杖とは?松葉杖の種類と構造、使い方を義肢装具士が解説します

一言に松葉杖と言ってもいくつかの種類があり、それぞれに向き・不向きがあります。

また、使い方にもいくつかの注意点があり、高さの合わせ方や立ち上がり方、歩き方を正しく理解しておくことが大切です。

本記事では松葉杖の種類や構造、基本的な使い方について、義肢装具士が分かりやすく解説します。

こんな方におすすめです。

  • これから松葉杖を使う予定がある方
  • 松葉杖の合わせ方や持ち方を知りたい方
  • 家族が松葉杖を使っており、基本的な知識を知っておきたい方
  • 医療・介護・リハビリ分野の基礎知識として整理したい方

松葉杖の種類と構造

定義

片側の上肢で使用し、人体と2点以上の接点を持つ歩行補助具をcrutch(クラッチ)と呼びます。

一般的にはcrutch=松葉杖とされていますが、ISOの分類ではaxillary crutch=松葉杖です。

人体との接点の違いで、axillary crutch、elbow crutch、forearm crutchに分けられます。

普段「松葉杖」と言われることが多いものは、脇で支える腋窩クラッチを指すことが一般的です。ただし実際には、前腕で支えるタイプや肘周囲で支持するタイプなど、見た目も使い方も異なるものがあります。

松葉杖の種類
松葉杖の種類

このように一口にクラッチと言っても形状はさまざまで、支持する部位や安定性、取り回しのしやすさが異なります。使用する人の筋力やバランス能力、荷重制限の程度によって適した種類が変わります。

概要

松葉杖は主に片足のケガなどで足を付いて歩けないときに使用する歩行補助具です。

骨折、靱帯損傷、術後の免荷指示、強い痛みがある場合など、患側に十分な荷重をかけられない場面で用いられます。

単に「歩くための道具」というだけでなく、患部を保護しながら移動能力を保つための重要な補助具でもあります。

適切に使えば安全性の高い補助具ですが、高さが合っていなかったり、誤った歩き方をしたりすると、脇や手への痛み、ふらつき、転倒の原因になることがあります。

松葉杖の構造

松葉杖の各部の名称と構造は以下の画像のようになっています。

脇当てを脇に挟み、握りを握りこみます。

全体の高さは下部支柱のロックナットで調整し、握りの高さはフレームのロックナットで調整します。

また、床に接する先端部分には先ゴムが付いており、滑りにくさや接地時の安定性に大きく関わります。見落とされがちですが、先ゴムの状態は安全性に直結する重要なポイントです。

松葉杖の構造
松葉杖の構造

松葉杖を使う目的

足にかかる荷重を減らす、もしくは免荷させることで足の負担を減らし、バランスを保った歩行を獲得することです。

特に、患部の安静を保ちながら移動しなければならない時期には、松葉杖を使うことで治療や回復を妨げずに日常生活を送りやすくなります。

また、痛みを軽減したり、無理な荷重による悪化を防いだりする目的もあります。医師や理学療法士から荷重制限の指示が出ている場合は、その指示に沿って適切に使用することが大切です。

全長の決め方

脇には大きな血管や神経が通っており、脇当ての高さが高すぎるとここを圧迫し、腕がしびれてしまいます。

また、不安定で転倒しそうになったときに脇当てが脇に引っかかってしまうなど、咄嗟の行動が取りにくくなることもあります。

そのため、脇当てはぴったり脇に食い込む高さではなく、少し余裕がある高さに設定することが大切です。

高さが低すぎても前かがみ姿勢になりやすく、肩や腕に余計な負担がかかります。高すぎても低すぎても使いにくさや疲れやすさにつながるため、全長の調整はとても重要です。

握りの高さの決め方

握りの高さは、腕で体を支えるときの負担感に大きく影響します。高すぎると肩がすくみやすく、低すぎると前かがみになって手首や肘に余計な負担がかかります。

実際には、立位で松葉杖を体の横に置いたときに、握りが大転子付近にくるか、肘が軽く曲がる程度を目安に調整すると使いやすくなります。

松葉杖の使い方
松葉杖の使い方

高さ合わせで確認したいポイント

  • 脇当てが脇に食い込みすぎていないか
  • 肘が軽く曲がる高さになっているか
  • 背中が丸くなりすぎていないか
  • 肩に力が入りすぎていないか
  • 左右で高さがそろっているか

立ち上がり方

松葉杖での立ち上がり方があります。イラストを用いて解説します。

立ち上がるときに大切なのは、最初から脇で体重を支えようとしないことです。まずは握りをしっかり持ち、手で体を支えながら立ち上がることで安定しやすくなります。

特に椅子からの立ち上がりはふらつきやすいため、焦らず一動作ずつ行うことが大切です。

立ち上がり方
立ち上がり方

※座るときはこの逆です。

座るときも勢いよく腰を下ろすのではなく、椅子の位置を確認し、松葉杖でバランスを取りながらゆっくり動作することが重要です。

歩き方いろいろ

松葉杖の歩行方法は、荷重制限の程度やバランス能力によって使い分けられます。ここでは代表的な歩き方を紹介します。

3点歩行

これが最も一般的な松葉杖での歩き方です。

患側に体重をかけない、もしくはほとんどかけられない場合に用いられることが多く、比較的安定しやすい歩行方法です。

部分免荷3点歩行

患側に一部荷重が許可されている場合に行う歩き方です。医師や理学療法士から「少しだけ体重をかけてよい」と指示されている場合に用いられます。

負荷3点歩行

患側への荷重がある程度許可されている場合の歩行です。回復の段階に応じて用いられることがあります。

片松葉歩行

片側だけ松葉杖を使用する方法です。完全免荷ではなく、ある程度歩行が安定してきた場面で使われることがあります。

2点交互歩行

左右交互にリズムよく進む歩き方で、比較的スムーズに移動しやすい一方、ある程度のバランス能力が必要です。

大振り歩行

上肢の力や体幹の安定性が必要となる歩行方法です。使用場面は限られますが、状態に応じて選択されます。

小振り歩行

大振り歩行よりも移動距離は短いものの、比較的安定を保ちやすい歩き方です。

階段での松葉杖の使い方

階段では平地よりも転倒リスクが高くなるため、特に慎重な動作が必要です。手すりが使える場合は、できるだけ手すりも併用しましょう。

登るとき

健側→患側 の順に出します

よく「良い足から上がる」と覚えると分かりやすいです。まず健側を上げ、その後に患側と松葉杖を追従させます。

降りるとき

患側→健側 の順に出します

こちらは「悪い足から下りる」と覚えられることが多いです。先に患側と松葉杖を下ろし、その後に健側を下ろします。

レンタル?購入?

松葉杖を使うときは基本的に整形外科などで医師や理学療法士などから使用の指示と指導があります。

病院・クリニックによって、松葉杖を本体ごと購入となるところやレンタル、無償貸し出しなどまちまちです。

これは完全にその病院・クリニックのルールに従う必要があることは知っておいてください。

返却が必要な松葉杖を返却しなかったり、本来の使用目的に沿わない使い方をして破損させたり、そういった場合には弁償を求められることもありますので注意してください。

また、短期間だけ必要なのか、しばらく継続して必要なのかによっても、レンタルと購入の向き・不向きは変わってきます。費用面だけでなく、返却の有無やサイズ調整のしやすさも含めて確認しておくと安心です。

注意点

2本の松葉杖で歩く機会は多くなく、慣れている人は稀です。

転倒したときに手を前に出しにくく、更なるケガの危険性が高いものです。

松葉杖を使って歩くときは足元に十分注意しましょう。

地面に着く部分(先ゴム)はゴム製になっています。使い古された松葉杖の先ゴムは滑りやすくなっていないかも注意しましょう。

濡れた床や砂利道、段差の多い場所では特に滑りやすく、不安定になります。雨の日や屋外の移動では、普段以上に慎重に歩くことが大切です。

また、脇当てに強く体重をかけ続けると、脇の痛みやしびれにつながることがあります。基本的には手で支える意識を持ち、脇は支点として軽く当てる程度に考えると安全です。

まとめ

松葉杖は、足にかかる負担を減らしながら移動するための重要な歩行補助具です。

ただし、どの松葉杖でも同じというわけではなく、種類や構造には違いがあり、使用する人の状態に応じて適切なものを選ぶことが大切です。

また、脇当てや握りの高さが合っていないと、腕のしびれや使いにくさ、転倒の原因になることがあります。全長や握りの高さを正しく合わせることは、安全に使うための基本です。

立ち上がりや歩行、階段動作にもそれぞれコツがあり、自己流で使うよりも医療職の指導のもとで確認することが望ましいです。

これから松葉杖を使用する方は、今回紹介した基本を押さえつつ、必ず主治医や理学療法士などの指示に従って安全に使用してください。

装具の使用について
治療用装具は、医師の診察・処方に基づき、症状や目的に合わせて選択されるものです。 自己判断で購入・使用すると、症状に合わなかったり、療養費の対象外となる場合があります。 痛みが続く場合は、整形外科などの医療機関で相談してください。
← 記事一覧へ戻る トップへ戻る